結論:固定費の4〜5か月分を用意する
架空の訪問看護ケース(件数が毎月少しずつ増えていく事業所)で計算すると、現金残高が最も低くなるのは開業後7か月目で、約770万円のマイナスです。開業時の月の費用は約180万円なので、用意する目安は月の費用の4〜5か月分になります。
月の損益は6か月目で黒字になりますが、現金は7か月目まで減り続けます。報酬の入金が2か月遅れるためです。
前提:架空ケースの条件
| 項目 | 架空ケースの値 |
|---|---|
| 件数(開業時) | 月40件 |
| 件数の増え方(標準ケース) | 毎月40〜50件ずつ増え、8か月目に月380件で横ばい |
| 件数の増え方(件数が少なめのケース) | 標準ケースの増加分を4分の3にし、8か月目に月295件で横ばい |
| 1件あたりの売上 | 8,000円 |
| 1件あたりの変動費 | 300円 |
| 月の固定費と人件費(開業時) | 180万円(人件費は件数に合わせず一定と見なす) |
| 入金 | 売上は提供の2か月後に入る |
| 借入の返済 | 含めない(必要な人は、返済を別に足します) |
入金が2か月遅れるのは、一般に提供月の翌々月に報酬が振り込まれることが多いためです。事業所の入金日で必ず確かめてください。
資金の推移
標準ケースは、入金の遅れで6〜7か月目まで残高が減り続け、7か月目に約770万円のマイナスで底を打ちます。件数が少なめのケースでは、8か月目に約868万円まで減り、15か月目でもまだマイナスです。
用意する資金の目安
月の費用の4〜5か月分は、約720〜900万円です。標準ケースの最も低い残高(約770万円)も、件数が少なめのケースの最も低い残高(約868万円)も、この範囲に入ります。
赤字の累計と、入金の遅れ
| 時点 | 標準ケース | 件数が少なめのケース |
|---|---|---|
| 損益の累計が最も低い月 | 5か月目(約−392万円) | 6か月目(約−491万円) |
| 損益が黒字になる月 | 6か月目 | 7か月目 |
| 現金残高が最も低い月 | 7か月目(約−770万円) | 8か月目(約−868万円) |
| 現金残高がプラスに戻る月 | 15か月目 | 15か月目でもまだマイナス(約−568万円) |
損益の赤字は約390万円です。そこに「入金が2か月遅れる分」が上乗せされ、手元の現金が減るのです。入金の遅れは、月の費用の見積もりでは見落としやすいので、必ず別の行で足しましょう。
黒字化しても、現金は減り続ける
損益計画だけを見ると、「6か月目に黒字になるから大丈夫」と考えてしまいがちです。ただ、報酬の入金は提供の2か月後のため、黒字になっても現金はすぐには増えません。標準ケースの資金繰りは次のとおりです。
| 月 | 件数 | 月次損益 | 累計損益 | 当月入金 | 月末現金 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 40 | −149 | −149 | 0 | −181 |
| 3 | 130 | −80 | −348 | 32 | −516 |
| 5 | 230 | −3 | −392 | 104 | −720 |
| 7 | 330 | +74 | −282 | 184 | −770 |
| 9 | 380 | +113 | −57 | 264 | −665 |
| 11 | 380 | +113 | +168 | 304 | −440 |
| 13 | 380 | +113 | +394 | 304 | −214 |
| 15 | 380 | +113 | +619 | 304 | +11 |
月末現金は、これまでの入金の合計から、これまでの費用の合計を引いた額です(架空ケース・万円)。
自分の数字で確かめる手順
- 開業後の月の固定費と人件費を書き出す。
- 件数の見通しを、開業後3か月、6か月、12か月の三点で書く。
- 報酬の入金の遅れを確かめる。一般に、提供した月の翌々月に入りますが、保険者や自治体の入金日で必ず確かめてください。
- 借入の返済を加える。
- 現金の残高が一番低くなる月のマイナスの額を、必要な自己資金の目安にする。
自分の事業所で試したい場合は、収支シミュレーターで件数と入金月数を入れてみてください。
数字は架空ケースの概算です。実際の資金計画は、金融機関や税理士とご確認ください。原則、個人情報はこちらでは取り扱いません。