月400件の訪問で、売上は320万円。それでも、費用を差し引くと利益は月2万円。1件あたりにすると、残るのは50円です。
これは訪問看護ステーションの架空のケースです。件数や売上だけでは見えにくい収支の構造を、「1件あたり」に分けて見ていきます。どこに費用がかかっているのか。どこを見直せば、利益がどれだけ変わるのか。その関係を、数字で確かめます。
前提(すべて架空)
- スタッフ4人。1人が月100件ペースで訪問する
- 平均単価は1件8,000円、月の売上は320万円
- 月の費用は人件費223万円、固定費83万円、変動費12万円(合計318万円)
売上から費用を引くと、月の利益は約2万円です。これを400件で割ると、1件あたり約50円になります。
1件の内訳
費用の大半は人件費で、売上の約7割を占めます。人件費は、給与・社会保険料などを含む月の総額(スタッフ4人分)です。内訳は次のとおりです。
| 項目 | 月の合計 | 1件あたり |
|---|---|---|
| 基本給・手当 | 173万円 | 4,325円 |
| 記録などの残業代 | 20万円 | 500円 |
| 社会保険料など(事業所負担) | 30万円 | 750円 |
| 人件費の合計 | 223万円 | 5,575円 |
| 固定費 | 83万円 | 2,075円 |
| 変動費 | 12万円 | 300円 |
| 費用合計 | 318万円 | 7,950円 |
1件あたりの利益は、8,000円 − 7,950円 = 50円です。ここでいう時間は、訪問そのものだけではありません。移動・記録・待機・事務の時間も、すべて1件の中に含めています。時給に換算した金額ではありません。
件数を増やしても、利益は増えにくい
このケースの黒字ラインは月398件です。いまは400件なので、上回っているのはたった2件です。“あと少しで赤字”の状態です。
ここで「では件数を増やそう」と考えると、壁があります。
- 人が足りない。1人が月100件ペースで回っているので、件数を増やすには職員を増やす必要があり、その分の人件費も増えます。
- 残業が増えやすい。記録や移動の時間も件数に合わせて増えるため、現場の負担が増します。
- 単価が下がることがある。訪問の組み立てによっては、短時間の訪問が増えて平均単価が下がることがあります。
件数を増やすのは、基本的には大切な目標です。ただし、最初に見るのは件数ではなく、1件あたりの利益です。式にすると次のとおりです。
1件あたりの利益 = 平均単価 −(人件費 + 固定費 + 変動費)÷ 訪問件数
1件あたりを動かす3つの手
月400件のまま、他の費用を変えないとして、次のどれかを動かした場合の単純計算です(すべて架空ケース)。
| 動かすもの | 1件あたりの変化 | 月の変化 |
|---|---|---|
| 1件の売上を500円上げる(訪問の組み立てや時間配分の見直しなど) | +500円 | +20万円 |
| 記録の残業を半分にする(約500円 → 約250円) | +250円 | +10万円 |
| 固定費を月で5万円下げる | +125円 | +5万円 |
いまの月の利益は約2万円です。単価の500円だけでも、利益は約22万円になります。件数を増やす前に、どれが自社で効くかを見ておくと、動く順番が決めやすくなります。
自社の数字で確かめる手順
- 直近月の、訪問件数・1件の平均単価・人件費・その他の費用の4つを手元に用意します。
- 費用の合計を件数で割り、平均単価から引くと、1件あたりの利益が出ます。
- トップページの1分診断で、同じ計算を手軽に確かめられます。
- 結果を見て判断に迷うときは、無料相談で一緒に見直せます。
原則、個人情報はこちらでは取り扱いません。入力するのは事業所全体の集計値だけでかまいません。
最後に
訪問看護ステーションの経営では、訪問件数や売上が注目されがちです。もちろん、それらは大切な指標です。ただ、売上が増えているのに手元にお金が残らないのであれば、経営のどこかに問題があるかもしれません。
利用者を増やす、訪問件数を増やす、職員を採用する。その前に、一度立ち止まって考えてみてください。今の1件の訪問で、いくら利益が残っていますか。
経営改善は、必ずしも大きな改革から始める必要はありません。まずは自社の数字を知ること。そこから、何を変えるべきかが見えてきます。
本記事の数値はすべて架空のモデルケースで、管理会計上の概算です。固定費などを訪問件数で按分した数値であり、個々の訪問の限界利益や実際の現金収支を示すものではありません。算出した利益は、手元資金の増減や税額を示すものではありません。実際の会計処理や税務上の判断は、税理士・会計士にご確認ください。